日記等


by kato_ashura

さあ、夏だ。

夏が好きだった。ずっと。
子供の頃は夏休みが何より楽しみで、母の田舎や、父の田舎にずっといた。
周りはあまり熱心に遊ぶ子供のオレの迫力に押されたのか、強く注意される事もなく、いうなればやりたい放題ではあった。
やりすぎでお目玉をくらったことは当然あるが、なかなかめげない子供であったと思う。

お盆が過ぎて、オレたちの夏が来る。
母の田舎は旧盆だから、特別だった。
怖い地獄絵や、叔父の日本刀。
精霊立ち(ショウロダチ)の行事。
田んぼに水を引く小川での蛍狩り。

日本刀はすごかった。
もの凄く綺麗で、魂をとられた。
普段物静かな祖父の腕力のすごさに驚いた事。
暗い倉に閉じ込められて、二階の小さな明かり取りから差し込む光をたよりにしまってあるものを探検した。
どうみても血としか思えない黒いものが付着した鎖帷子をみつけたり、きちんとたたまれた経帷子もみつけた。
数本の日本刀も。
中には子供の力では抜けないのもあった。
よほど鞘のしつらえがよかったのか、それとも錆びて手に負えなくなったのかはいまだにわからないが。
いつのまにかオレにとってはしかられて閉じ込められた薄暗い倉の中が興味津々の遊び場になっていた。

その家も建て替えられて、魚を焼く囲炉裏のある広い板の間と、板の間の次ぐらいに広くて、りっぱな自在鍵のある黒い漆塗りの縁の囲炉裏や、大きな振り子時計のあった仏間も、もうないという。
かつて幼い娘を連れて訪ねてから、その娘がまた来るからねと言ったまま東京へ帰って、いまだに来ないと言われ続け、幼かった娘はこの6月に結婚した。

そう、祝儀には、海が近いせいか、決まって鯛の塩焼きがでて、それをその席では食わずに、あとで集まったときに、もう一度囲炉裏で軽く焼いて、どんぶり鉢に入れて熱燗を注ぎ、身をほぐして食べながら飲む。
まちがいなく一生忘れられない飲み方だ。
鯛酒。
祝言だから皆機嫌がよく、明るくなっても飲んでいる。
横になっていても、話をふられたらきちんと返事をするのが掟だ。
寝ぼけて笑われるのは本当の恥なのだ。
こういう時、無理はするためにある。
例外はなく、掟は守られていた。


夏が来る。
逝った人たちとの会話の季節だ。
今年も墓を洗って、墓の植栽を整えて花を供え、線香の香りを嗅いだ。
青い田や、草いきれ、流れる水、静かな墓石。
オレは、夏が好きだ。
Summertime
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by kato_ashura | 2009-07-16 20:55