日記等


by kato_ashura

長くて短い時間。

モノレールが玉川上水の駅に近づくと眼下に大きな霊園が見えて、妻は明るくていいわねと言った。
統一された形のグレーの石が、暑くて強い日差しの中で揺れて見えた。
自転車で迎えにきてくれているはずの恵子さんはまだ着いていなくて、改札の前でぼんやり立っていると、近くに高校があるらしく制服姿の学生たちが通り過ぎて行った。自分のあの頃が遠くなったのを感じながら恵子さんの顔も知らないのに西武線の駅の方までさがしに行った妻をせっかちだなと思いながら見やっていると声をかけられた。
その声と目に面影があって30年も会わずにいた事が嘘のようにさえ感じられ、すぐになれなれしい話し方になっている自分を発見。
そのとき思ったのは、あれ?こんなにちいさかったっけ。
恵子さんは友人の北原の奥さんで、むかしオレと同じ会社に勤めていたグラフィックデザイナーだった。
あるとき北原と飲む約束をした日に、たまたま帰る時間が同じになった恵子さんを一緒にどうかと誘ったそれが機縁で、北原と恵子さんは結婚した。
北原の暮らした家への道を国立音大のホールに来た事があるとか話しながら歩く日傘をさした女二人の間を少し後からついて歩いた。
あそこなのよと恵子さんの声がして、その先に白い集合住宅が見えた。
左には酒屋があって、きっと北原はこの店に通ったなと想像できて、酒屋が近くていいねと言うと、そうなのよ、よくきてたわと恵子さんはオレの想像どおりにこたえた。
階段を3階まで上がりながら、此処を上がるのに最後の頃は2〜30分かかっていたわ、つらそうだった、私も力がないしと初めて苦しかった事を口にした。
フランス人形の座っている玄関に入り、とてもよく整理された部屋に通され、奥の和室には回り灯籠が滞る事なくよく回っていて、簡素な白木の棚があって、上にはお盆の支度が整っていて、その横で見慣れたあいつの笑顔がよく来たなと言ってるみたいにこっちを見ていて。
ああ、ホントに逝っちまったんだな。
と、思った。
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by kato_ashura | 2008-07-15 23:13